このような症状の方へ

中枢疾患患者に対するPNF

  • 脳血管疾患(脳梗塞・脳出血など
  • パーキンソン病など

脳血管疾患による麻痺は一般的に発症後6カ月で回復が頭打ちになると言われています。 しかし一般論は“多くの人”についてであり、個々人がどのくらい回復するかは個人差があります。また一生涯の問題をたった6カ月であきらめるのは早すぎるかも知れません。現在の医療保険では脳血管疾患のリハビリ期限が180日と定められていて、まだまだ良くなりたいと高いモチベーションをお持ちの方、自宅でのリハビリだけでは上手く状態を維持向上することが困難、または不安な方、年齢が若く介護保険非対象の方などがリハビリの行き場が無い状態が数多くみられ“リハビリ難民”という言葉まで生まれています。
またパーキンソン病などの難病疾患は回旋運動が重要ですが、セルフコンディショニングだけではなかなか上手くいかないこともあります。
PNFでは様々な感覚受容器へ刺激と操作を加え、その人が持っている潜在能力を引き出すことにより、神経障害、筋力低下、協調不全、関節可動域の改善、日常生活に必要な運動機能の獲得を目的に施術を行います。

中枢疾患患者に対するPNF
  • 起き上がり動作など床上動作に努力を要する、時間がかかる。
  • 後遺症で下肢に麻痺があるがもっと歩けるようになりたい。
  • 後遺症で上肢に麻痺があるがもっと日常生活で使えるようにしたい。
  • 転びやすいのでバランスを向上させたい。
  • すぐ体が硬くなって痛い、または動きづらい。

PNFの効果

1歩行能力の改善、歩き方の改善、距離の延長、バランスの向上を図ります。

2筋緊張を減らし、日常生活動作をスムーズに行えるようにします。

3痛みがある方に対して、正しい動作の再学習を促し痛みの軽減を図ります。

4寝返り・立ち上がり・立位動作向上による、介助量の軽減を目指します。
(例:ベッドや車椅子への移乗・トイレ・更衣・入浴・歩行介助・・・)

5手の機能向上(書字・お箸の使用など)

6職場復帰への支援(デスクワーク・美容師・歯医者など)

7趣味活動の再開(ゴルフなど)

体験談

退院して半年、2人だけでのリハビリは困難で、
自費で通えるリハビリ施設を探そうと決めた。

田中有子さん
「ケアーズ」ホームページより

退院して半月。ヘルパーさん、マッサージの先生、訪問看護師さんに入ってもらっての自宅生活に徐々に慣れてきた。退院翌日には銀座まで出かけ、ホテルでの宿泊も経験した。しかし、歩行はツエをつきながらやっと数十メートル。歩行距離を延ばしたいし、いずれは歩けるようになってほしい。病院でのリハビリを続けたかったのだが、医療保険制度の関係で、発病半年後以降は無理だと言われていたから、自分たちでなんとかするしかなかった。
 退院前に、入院先のPT(理学療法)の先生から言われた、「歩くことがリハビリです」という言葉だけが頼りだった。だから毎日歩くことだけは続けようと思っていた。毎日歩き続ければ歩行距離が延び、歩き方もうまくなると信じていた。
 退院直後、自宅脇の裏道を初めて2人だけで歩いた時、20メートルくらい歩けただけで、「こんなに歩けるようになったんだ」と大感激したものだ。歩行距離が数メートルでも伸びると、それが翌日への励みになった。しかし、日を重ねるにつれ、夫の歩く姿勢が気になりはじめた。右肩が極端に下がり、左足が外側に開いてしまい、斜めに歩くような感じなのである。視線は足元が怖いからずっと下向き。背中がどんどん丸まっていくようだった。「体が傾いているよ」「時々は前を向いて、背中をしゃんとして」。私は声をかけ続けたが、歩行距離はあまり伸びず、姿勢も直らない。そのうち夫は、腰が痛い、疲れたと、すぐに車イスに乗りたがるようになってしまった。
 「このままでは、ダメだ。やっぱり、リハビリを続けたい」。退院してわずか半月後には、切実にそう思うようになっていた。
 病院のリハビリが無理ならば、自費でもいいから通えるところを見つけよう。幸いにも、私には心当たりがあった。沖縄の病院でリハビリは始まったのだが、そこにいたPTの実習生から聞いたことがあったのだ。彼女は東京の夜間学校で学び、実習先が沖縄の病院だった。東京に住んでいる者同士、リハビリの合間によくおしゃべりした。ある時、「昼間はリハビリ施設でアルバイトをしているんです」という話になった。「それは、どこにあるの?」「お茶の水です。ただ、病院ではなくて、健康保険が使えない施設でなんですよ」。東京にはそんな施設もあるのかとその時は聞き流したのだが、その会話は忘れられなかった。
 さっそくインターネットで、自費で通えるリハビリ施設を探した。その結果、いくつか施設が見つかった。その一つが、お茶の水のPNF研究所だった。PNF研究所のホームページには、「PNFは本来、主に脳血管障害や脳性麻痺などによる神経障害、筋力低下、協調性不全、関節可動域制限などの改善、または、日常生活に必要な運動機能を獲得、向上させるための治療法として使われてきました。現在では脳卒中、パーキンソン病、脊髄損傷や腰痛、関節症、スポーツ障害といった整形外科的疾患にも効果があります」と書かれていた。夫のリハビリ先としては、うってつけである。沖縄で出会った彼女もここにいるに違いない。
 すぐに連絡をして、予約を入れた。PNF研究所では、最初にドクターカウンセリングを受け、その後PTによるPNF(Proprioceptive Neuromuscular Facilitation の略語で、日本語では固有受容性神経筋促通法と訳される、1940年代にアメリカで始められた、リハビリテーション治療の技術の一つ)を受ける。2週間後の予約が取れただけで、なぜかホッとした。
 当日は、持参したリハビリ病院の診断書をもとに医師と夫の症状を確認した後、PNFの体験に入った。PTの先生とマンツーマンで、体の筋肉を意識しながらのゆっくりとしたストレッチのような運動が続き、その後、平行棒を使ったり、ツエをついての歩行訓練が計40分にわたって行われた。夫は精いっぱい体を動かそうとしている。歩行訓練では欠点を指摘され、筋肉の使い方を意識した正しい姿勢での歩き方を指導された。それだけで、歩く姿が変わっていった。探していた専門家の指導のもとでのリハビリを、ここで続けられる。本当に嬉しかった。週2回通うことを即決した。
 その後、自宅で訪問リハビリを受けられるようになったが、PNF研究所通いも毎週続けている。今や夫は、ツエだけで800メートルぐらい歩けるようになり、小一時間、立ったままで料理を作れるほど、体の機能が回復した。
 沖縄で出会った実習生の話からリハビリ施設を探し、リハビリを継続することができたことは、今の医療体制の中ではラッキーだったと思う。専門家の指導によるリハビリを継続できたことが、夫の回復に大きく寄与していることは確実だ。リハビリを続けられてよかったと、心の底から思っている。